代入で検算する:0・∞・90° を入れて答えを確かめる
単位の検算は、式の「形」が合っているかを確かめます。でも、 の付け忘れや sin と cos の取り違え、符号のミスは見つけられません。そこで使うのが、答えに特別な値を代入する検算です。極端な場合なら、計算しなくても答えがわかるからです。
代入検算の手順
- 答えがすぐにわかる極端な場合を探す
質量を 0 や ∞ に、角度を 0° や 90° に、2つの量を等しく。 - その値を答えの式に代入する
0 や ∞ を入れたときの式の行き先を調べます。 - 物理的な結果と比べる
1つでも合わなければ、その答えは間違いです。
例:粗い斜面の加速度
問題
傾きの角 θ の粗い斜面を、物体がすべり下りている。動摩擦係数を μ′、重力加速度の大きさを g として、斜面に沿って下向きの加速度 a を求めよ。
ありがちな答え
単位は で合っています。でも θ = 0(水平な面)を代入すると a = g。水平な床に置いた物体が、勝手に g で加速することになってしまいます。正しくは 。θ = 0 なら −μ′g(摩擦でブレーキ)、θ = 90° なら g(自由落下)、μ′ = 0 なら g sin θ と、どれも納得できる結果になります。
よく使う代入のパターン
| 代入 | 何がわかるか |
|---|---|
| 質量・長さを 0 にする | 「相手がいない」「片方だけ」の状況になり、自由落下や静止など、答えのわかる問題に戻ります。 |
| 質量・抵抗などを ∞ にする | 動かない壁、断線、とても重い物体。答えは 0 や、知っている値に近づくはずです。 |
| 2つの量を等しくする | m₁ = m₂、R₁ = R₂ など。つり合って 0 になる、ちょうど半分になる、などがすぐわかります。 |
| 角度を 0° と 90° にする | 水平な面、垂直な壁、真上に投げる。sin と cos の取り違えはここで見つかります。 |
| 時間を 0 と ∞ にする | スイッチを入れた瞬間と、十分に時間がたったあと。はじめの状態と最後の状態に合っているか確かめます。 |
| 加えたものを「ない」ことにする | 摩擦係数 μ = 0、比誘電率 εr = 1、内部抵抗 r = 0。付け加える前の、よく知っている式に戻るはずです。 |
| 量を大きくしたときの増減を考える | 速く回せば張力は増えるはず、近づけば音は高くなるはず。符号の間違いが見つかります。 |
代入は2つ以上試すのが安全です。1つの代入では、たまたま正しい答えと同じ値になる誤答もあります(弾性衝突の例)。
単位の検算と組み合わせる
| 見つけられるミス | 単位の検算 | 代入の検算 |
|---|---|---|
| √ の付け忘れ、2乗の付け忘れ | ○ | △ |
| 分子と分母の取り違え | ○ | ○ |
| 係数(、2 など)のミス | × | ○(知っている答えと比べる) |
| sin と cos の取り違え | × | ○(0° と 90°) |
| 符号のミス | × | ○(増えるか減るか) |
| 直列と並列の取り違え | × | ○(0 と ∞) |
まず単位で形を確かめ、次に代入で中身を確かめる。2つを通った答えは、かなり信頼できます。
力学の定番問題
粗い斜面をすべり下りる物体の加速度
代入:μ′ = 0/θ = 90°/θ = 0
アトウッドの器械(滑車につるした2つのおもり)の加速度
代入:m₁ = m₂/m₂ = 0/m₂ → ∞
水平な台の上の物体と、つるしたおもりの加速度
代入:m₁ = 0/m₂ = 0/m₁ → ∞
静止した物体への弾性衝突(はね飛ばされる側の速さ)
代入:m₁ = m₂/m₂ → ∞/m₁ → ∞
完全非弾性衝突(くっついた後の速さ)
代入:m₂ = 0/m₂ → ∞/m₁ = m₂
2本のばねを直列につないだときのばね定数
代入:k₂ → ∞/k₁ = k₂
斜方投射の水平到達距離
代入:θ = 0/θ = 90°/θ = 45°
斜方投射の最高点の高さ
代入:θ = 90°/θ = 0
鉛直面内の円運動、最下点での糸の張力
代入:v = 0/v を大きくする
熱・気体の定番問題
電磁気の定番問題
2つの抵抗を並列につないだときの合成抵抗
代入:R₂ → ∞/R₂ = 0/R₁ = R₂
内部抵抗のある電池で、外部抵抗が消費する電力
代入:r = 0/R = 0/R → ∞
RC回路でコンデンサーを充電するときの電気量
代入:t = 0/t → ∞/R → 0
難関大誘電体を半分だけ入れた平行板コンデンサーの電気容量
代入:εr = 1/εr を大きくする